ブラックサンダー社長・河合辰信の学歴と経歴とは?
ブラックサンダーでおなじみの有楽製菓。その社長・河合辰信さんは、ちょっと意外な経歴を持っているんです。
実は理系の大学院を卒業して、大手IT企業で働いていた元エンジニアさん。お菓子業界とはまったく違う世界からの転身でした。
ここでは、そんな河合さんの学歴と社会人としてのスタートについてご紹介します。
次は、河合さんがどんな学校を出て、どんなお仕事をしていたのかを見ていきましょう。
横浜国立大学大学院を卒業!理系出身のエンジニアだった?
河合辰信さんは、横浜国立大学大学院で修士課程を修了した、バリバリの理系出身です。
卒業後は、世界的なIT企業「シスコシステムズ合同会社」に就職。ネットワークの仕組みを支えるシステムエンジニアとして働いていました。
このときは、家業を継ぐつもりはまったくなかったそうです。むしろ、ITの力で社会や製造業に貢献したいという気持ちが強かったといいます。
私は同じくエンジニアとして働いていますが、シスコのような外資系企業で働くのは本当にハード。でもそのぶん、視野の広さや論理的な考え方がしっかり身につくんですよね。
そうした経験が、のちにお菓子業界に入ったとき、マーケティングや商品開発、組織づくりなどにしっかり活かされていると感じます。
理系ならではの「仕組みを考える力」や「本質を見抜く目」が、河合さんの経営スタイルにもにじみ出ていますね。
兄の死を乗り越えた河合辰信が家業を継いだ経緯とは?
河合辰信さんが家業を継いだのは、本人にとっても想定外の出来事だったそうです。
実は、有楽製菓を継ぐ予定だったのはお兄さん。河合さんはずっと「自分は違う道を歩む」と思っていたといいます。
ところが突然、運命が大きく動き出します。
この章では、河合さんがどんな経緯で家業を継ぐ決断をしたのか、その背景を見ていきます。
長男の急逝がきっかけで家業へ…葛藤と決意のドラマ
河合辰信さんにはお兄さんがいて、もともとそのお兄さんが有楽製菓を継ぐ予定でした。
自分は違う道に進むつもりだったので、理系の大学院を出て、IT企業でキャリアをスタートさせたのです。
ところがその矢先、なんとお兄さんが急逝。
家族にとってあまりにも突然の出来事でした。
その後しばらくして、父親(現・会長)から「帰ってくるか」と声をかけられた河合さん。
悩んだ末、2010年に実家の有楽製菓へ入社することを決めました。
でも、このときの気持ちはとても複雑だったそうです。
「自分が本当にふさわしいのか」「もっと適任がいるのでは」と何度も迷ったそうですが、実際に働きながら会社や商品と向き合ううちに、「自分がやるしかない」という覚悟が芽生えていきました。
実際、私自身も家業の選択肢があった身として、この「ふとした瞬間に託される重み」は本当にリアルに伝わってきます。
予定外の人生の中で、葛藤と向き合いながら、自分の中に芯をつくっていく。
河合さんの決断は、まさにそんな覚悟の上に成り立っていたんですね。
家族経営の難しさと親子関係、経営者としての覚悟
家業を継いだあとは、順風満帆というわけではありませんでした。
とくに父親との関係は、最初のころはよく衝突していたそうです。
河合さんは前職が外資系企業だったこともあり、「立場に関係なく、正しいと思うことはハッキリ言う」スタイル。それに対して、保守的な家族経営の空気とは衝突も多かったとか。
でも、社長就任後は一転して「最初の3年間は大きく会社を変えない」と決めていたそうです。
それは「先代の方針を否定しない」という強いリスペクトの表れ。
自分と父親の両方が、お互いを尊重しながら、少しずつ社内の文化を作っていったというのは、まさに理想的な世代交代の形だと思います。
私は現在、中間管理職を経験していますが、「上と下の間でバランスを取る」のって本当に難しいんですよね。
そんな中でも、河合さんは社員の提案を取り入れて、会社の制度を少しずつ整え、風通しのよい会社へと変えていきました。
「社長になる覚悟」と「社長としての柔らかさ」。
この両方を併せ持っているところが、河合辰信さんの魅力なのかもしれません。
ブラックサンダー誕生秘話と歴史をおさらい!
今や「誰もが知ってるチョコ菓子」となったブラックサンダーですが、実は最初から人気だったわけではありません。
誕生からブレイクまでには、長い年月とたくさんの試行錯誤がありました。
ここでは、ブラックサンダーがどのように生まれ、なぜ爆発的にヒットしたのかを振り返ってみます。
初代社長(父)が生み出したお菓子の原点とは?
ブラックサンダーが発売されたのは1994年。
考案したのは、河合辰信さんの父であり、当時の有楽製菓の社長だった河合武さんです。
「夢のある安くておいしいお菓子を届けたい」という思いから、わずか30円という価格で販売されました。
味にもこだわり、ザクザクとした食感と濃厚なチョコの味わいでコスパ抜群。
しかし、発売当初は目立ったヒットもなく、地道な販売が続いていたそうです。
工場で細々と作りながら、「いつかは…」と信じて続けてきた商品。それがブラックサンダーの原点です。
このあたりの話は、私自身も中小企業にいた頃の「地道に続けるしかない」時代を思い出して、なんだか胸が熱くなります。
大ブレイクのきっかけはあのメダリストのひとこと!
長年目立たなかったブラックサンダーに、まさかの転機が訪れたのは2008年。
なんと、あるオリンピックメダリストが「好きなお菓子はブラックサンダー」とテレビで発言したことがきっかけで、瞬く間に人気が爆発!
一時は品薄になるほどの売れ行きで、ブラックサンダーの名は全国に広まりました。
そして、商品を安定供給するために豊橋工場を新設。
このタイミングで河合辰信さんがマーケティング部門を立ち上げ、本格的に“戦略的ブランド展開”が始まっていくことになります。
グロービスMBAで得た学びと「志」とは?
河合辰信さんが経営者としての「覚悟」を持てた背景には、ビジネススクールでの学びがありました。
入社から数年後、社長になることを意識し始めた河合さんは、グロービス経営大学院に通い始めます。
そこで得たものは、経営知識だけではありませんでした。
経営を学びなおした理由と得た気づき
グロービスに入学した理由は、「経営を体系的に学びなおしたい」と思ったから。
マーケティング部門を立ち上げたとはいえ、当時はまだ手探りで、「これでいいのか?」と不安だったそうです。
授業では、特に「企業家リーダーシップ」という科目が印象に残っているとのこと。
その中で、ファミリービジネスのディスカッションを通じて、講師からこんな言葉をかけられたそうです。
「世界に70億人いる中で、この会社を継げるのは、あなたしかいない」
この一言で、河合さんの中にあった迷いがすっと消えたと語っています。
「自分にしかできないことがある」と確信を持てた瞬間だったのではないでしょうか。
私も学び直しを経験したことがありますが、大人になってからの学びは「問いの質」が変わりますよね。
「どう生きたいか」を掘り下げる時間が、経営にも深みを与えるのだと実感します。
「日本一ワクワクする菓子屋」への強い想い
グロービスでの学びを通して、河合さんが言語化したのが「志」です。
それが「日本一ワクワクする菓子屋をつくる」というビジョン。
お菓子はただお腹を満たすだけでなく、人の心をワクワクさせ、笑顔にする力がある。
そんな思いから、ブラックサンダーを「コミュニケーションツール」として捉え、SNSや広告などでユニークな仕掛けを展開していきます。
しかも、ワクワクさせたいのはお客様だけではありません。
「社内の人たちもワクワクできる会社にしたい」というのが、河合さんのもう一つの願いです。
社員が自由にアイデアを出せるように、自分自身が率先して“ふざけたこと”も口にする。
トップが柔らかくいることで、組織の空気は確実に変わっていきます。
ブラックサンダーのマーケティング戦略が斬新すぎた!
ブラックサンダーの人気がここまで続いている理由。それは、商品の魅力だけではありません。
河合辰信さんのユニークで遊び心のあるマーケティング戦略が、消費者の心をしっかりつかんでいるのです。
ここでは、話題を呼んだキャンペーンや、その裏にある考え方をご紹介します。
義理チョコキャンペーンでSNSを席巻した戦略とは?
河合さんがマーケティング部を立ち上げてすぐに取り組んだのが、2013年の「義理チョコキャンペーン」。
ブラックサンダーは価格的にも見た目的にも「どう見ても本命じゃない」お菓子。
だったら逆手に取って、「一目で義理とわかるチョコ」というコピーで広告を打ち出したんです。
丸ノ内線の新宿駅には巨大広告を展開し、「義理チョコマシーン」なる自販機も設置。
SNSでも話題となり、テレビでも報道されるなど大きな注目を集めました。
普通ならネガティブに捉えられがちな“義理”を、あえて前面に押し出す発想はとても斬新です。
私もマーケティング企画に関わったことがありますが、ここまで“振り切る”勇気ってなかなか持てないんですよね。
でもそれが「おもしろい!」「わかってる!」と共感されるポイントになったんだと思います。
消費者との「対話」で売上を伸ばすプロの手腕
河合さんのマーケティングは、ただ一方的に商品を売り込むものではありません。
「お客様との対話」がベースになっています。
たとえば、何か企画を考えるときは、自分の中にお客様を“憑依”させて、どんな気持ちになるのかを想像するそうです。
「このコピー、意味が伝わりにくいかも」「こういうトーンのほうが伝わるはず」――そんなふうに、常に消費者目線で判断しているとのこと。
実際、マーケティング現場ではたくさんのアイデアが出ても、意味が伝わらないものや、受け手に刺さらないものはすべてボツ。
「作り手本位のアイデアはダメ」という基準で、徹底的に選ばれているそうです。
この姿勢は、エンジニア時代に培った「ユーザー視点」や「論理的思考」にもつながっている気がします。
お菓子という“感情”に訴える商品であっても、そこには明確な戦略と分析がある。
だからこそ、ブラックサンダーは今でも多くの人に愛されているのだと思います。